バブルと呼ばれる異常加熱した経済というかその状態を示す言葉があるが、定義は難しい。
気軽に使われているが、何を持ってバブルと言うのか、定義が出来てはいない言葉ではあるだろう。バブルによるリスクという観点から言うと、実態に沿っていない価格にまで過剰に資金が流入して、株や不動産の価格が上昇してしまう事がバブルであり、過剰感が解消されると実態の価格まで下落するので、その株や不動産を持っている人にとっては価格が下落してしまうリスクがあり、それがバブルによるリスクと言える。バブル状態になる前に資産を買っている人にとっては、バブルで上昇して、下落する事は基本的にはリスクではなく、バブル状態になってから資産を買う人にとってリスクとなってくる。
ではいつからがバブル状態なのか、実態の価格というのは株で言うとPERを指標にしたりはするが、本当のところは分からないので、誰もバブルの開始点を明言できない、と言う事になる。何が過剰な資金流入を促進するのか、今の状況だと政府の金融政策と言う事になるが、これは比較的統制が取れており、バブル的な動きを直接的には呼びこまない。政策決定者が客観性のある指標を基に政策決定を行うからであり、さらには専門家である人間の意思で決定されることも大いに影響している。
一方、個人の動きというのは厄介であり、素人が大半なので、過熱感が止まらない。厳密にいうと、一定程度まで上昇した資産の価格を見ると、ヒトは自分は乗り遅れてはいけない、その感情で買いに走る。これは単純すぎる人間心理のようであるが、個人による過熱感が原因のバブルというのは結局これの繰り返しではないかと思っている。
これは人間の癖みたいなものであり、オランダでチューリップの価格が急騰した頃から変わっていない。資本主義という資本を持っている人=金を持っている人が成功するという論理が世の中にある限り変わらない根本なのだろう。バブル発生前に資産価格が上昇を一定期間続けると、そこでの成功体験が喧伝されるようになる。それをみて、俺も俺もと一獲千金を夢見てしまう。それがバブルの開始点であるのだが、乗り遅れたくない個人による資金流入が続くとさらに資産価値が上がる。すでにバブルが始まっているのだが、その資産価格の上昇がさらに金を呼び込むというスパイラルを作り上げて、バブルが形成されるのである。
ただ、これはムードの問題であるから、どこかで冷や水が浴びせられると一気に逆向きの流れが働く。高騰した資産価格での売り逃げをしだす人の数が一定程度を超えると下落が始まる。そうすると損失が出る人間の割合が徐々に増えていき、売りが売りを呼ぶ展開にならざるを得ない。これが90,91年頃に発生したバブルの実態であったが、過去について分析するのは簡単である。
そういう意味で、今はバブルなのかというと、客観的に見てみてもまだそうではないのではないかというのが筆者の見方である。周りを見ても過熱感はない。誰もが株、不動産、ゴルフ会員権を買いあさっているという雰囲気はない。ただ、昨日の日経平均株価の終値30,000円越えは一つの起点になるかもしれない。これから21年の証券口座開設数が20年の証券口座数を大きく超えてくるようだと危険な状態である、「皆が乗り遅れるな」と思ってる状態に突入してくるのではないか、と思っている。なのでバブルはこれから始まり、株価は暫く史上最高値までは上がっていくのではないかと思うが、歴史は繰り返されると思われ、23年の米国の金融緩和のExitが見えてくる頃である22年末頃から逆まきが始まるのかもしれない、と思っている。