コロナウイルスの感染拡大から既に1年半近く経っているわけであるが、日々の仕事については出張はなく、ZOOMやTeamsを活用した会議というのが板についてきたというか、他に選択肢がないからでもあるが、連日ZOOMやTeams会議が盛りだくさんである。
世界各国と遠隔会議を行い、非常に手軽にコミュニケーションが取れるようにはなっている。朝は米国のクライアントと話を行い、日中はオーストラリアやアジアの国々との会話、午後の遅い時間からインドや中東が入ってきて、夜にかけて欧州、ロシアとの遠隔会議を行う。
仕事の面だけでいうと世界は狭くなった。遠隔会議ツールの発達によって、思い立ったら世界のどこにいる人とも基本的にはコミュニケーションをとれるようになった。非常に便利な世の中であり、不必要に13時間のフライトに乗る必要がなくなったのは、筆者にとっては大きな進歩である。
ただ、本当に世界は狭くなったのであろうか。大航海時代が世界の距離をまずは縮めて、その後の海運の発展があった。江戸時代、明治時代と日本からも欧州に人が渡航するようになり、明治維新につながる一連の流れも、海運の発展があり、世界が狭くなったことによる影響であろう。
また、その後二度の大戦を経て航空機業界は目覚ましい発展を遂げた。ライト兄弟の初飛行からそれほど時を待たずして、アメリアイヤハートの挑戦、戦闘機の開発があり、旅客機の普及が始まるわけである。その後、世界は航空機網で結ばれることになった。ここでさらに世界は狭くなったわけである。
そして現代の遠隔会議、遠隔のコミュニケーションによる距離感の縮小を迎えているわけであるが、本当に海運の発展と、旅客機の発展と同列なのであろうか。もちろん、正確に言うと同列ではない。物理的な接点を得るための距離は変わっていないからである。言い方を変えると、ZOOMを使っても相手と会えるわけではなく、物理的には遠いままである。この点は違うと言える。そういう意味では触覚と嗅覚、味覚については縮まってはおらず、視覚、聴覚、という点でだけ距離が縮まっているという言い方ができるだろうか。
ここに論点整理のポイントがあり、ビジネスは視覚、聴覚情報、要は声と顔色さえ見えていれば、ほぼほぼ問題ないのであるが、それ以外の部分については触覚、嗅覚、味覚というのが重要であり、特に観光業において重要な点はその三つになるだろう。むしろ、声は優先順位が低い。
ビジネスの世界の距離は縮まった。これはコロナが変えた良い面であろう。コロナ前よりも環境が良くなっているのである。そういう面から言うと今後ビジネスの意思決定、国を超えた協力関係、これらの速度は加速していくだろう。
一方、現在実際に観光業が苦境に立っているように、触覚、嗅覚、味覚が重要なファクターであるそれらの業界は苦しい状況が続く。これを打破するのは勿論物理的な往来の再開ではあるが、一方で、ZOOMによるVirtual観光ツアーではないのだと思う。それでは触覚、嗅覚、味覚を刺激しづらいからである。そういう意味では、例えば、タイ料理屋に行くとタイの味覚を味わえるが、それの発展形のような形で、例えば福島のハワイアンズみたいなものの各国版ができていくのかもしれない。できていくのかもしれないというか、そこに商機が生まれるのか、と思いを馳せるわけである。