公共工事において、入札できる技術レベルを持つ会社が4社しかおらず、その4社が毎年持ち回りで受注することを決めており、価格を吊り上げるとする、これは談合であり、公共工事の場合は免許や許認可、罰金という形で罪を問われることになる。公共工事に限ったことではなく、寡占的な業界、例えば鉄鋼業界でも日本製鉄とJFEスチールが価格について歩調を合わせて値上げをするようなことがあり、トップが秘密裏に合意していた、なんてことが明るみになると、これは法律違反として検挙されることになる。
株式市場において、自社が来月に新製品を発表することを知っており、それが画期的なものであり株価の上昇が予想される、その段階でその会社で働く役員が自社の株式を大量に購入することはインサイダー取引に当たるとされ、これも法律違反であり、これだけ明確なケースが見つかれば、恐らく一瞬で逮捕されることになるだろう。
しかしながら、世の中には恥ずかしげもなく大手を振って談合をしている組織もある。例えばOPECという産油国による会議であるが、減産、増産を歩調を合わせて行い、価格のコントロールをしている。もちろん毎回思惑通りに行くわけでもなく、あとは流通価格を議論しているわけではないのだが、明らかに供給量を共同で調整して価格統制を図っている。談合と呼ばずして何と呼ぼうか。
また、ビットコインのような暗号通貨はどうであろうか。これもインサイダー取引とは呼べないものであるが、一部の人間の発言で激しく上下動する状況になっている。イーロンマスクが冗談で言ったことでドギーコインだか、ドッジーコインだかは10%近く乱高下したという。暗号通貨の市場が急激に広がっている割に、国をまたいだ国際的なものであるから故、規制は進んでおらず、何でもありの状態になっている。明日ゼロになってもおかしくない通貨もあると思われるが、そんなことはあまり気にされていない。
新聞記事のようなありきたりな考察が続いたわけであるが、OEPCは70年代、80年代から力を発揮しているとはいえ、この暗号資産の動きを見ていると、世の中が投機的になっていることを実感する次第。何が言いたいかというと、皆が皆、余ったお金でギャンブルをしている、そういう経済の状態になりつつある。もちろん、ポーカーやルーレットと違い、どちらかが勝ち、どちらかが負ける、そういったゲームではなく、例えばここ50年の米国の株式市場のように拡大が継続すれば、全員が勝者にもなりうる、というのが例えば株式投資の前提ではある。しかし、この株式投資という観点と、ギャンブル的投機的投資、これの線引きがあいまいになっている。
ギャンブル投資はギャンブル投資であり、こちらには勝ち負けが存在する。インフレ率から異常に乖離している資産は、これはバブル的であり、このことは意識されないといけない。投資の勧めが国家から出ている状況ではあるが、資産についてはこの点の個人での判断が重要になってくる。二階建て構造の二階部分のバブル的な部分は、短期的にみると一本調子での上昇に見えるが、これは中期では絶対に調整が来る。個人投資家の弱い点はこの点であり、中長期のトレンドと、歴史に照らし合わせて考えることが、プロと比べて弱い。だからこそマスでトレンドを作ってしまう個人のブームはバブルを生み出すし、歴史を繰り返すのである。みんながプロ投資家のような知識、経験があると錯覚するのであるが、市場参加者には現在圧倒的に素人が流入してきているのである。