カトリックとプロテスタント
マルティンルターがカトリック教会の免罪符販売など、金稼ぎのための宗教利用について反発して、宗教改革に走り、カトリック教会に対する反発者という意味でプロテスタントという存在が世に広まっていき、どちらかというと欧州を北に行くとドイツなどのプロテスタント寄りの国が多く、南にはイタリアを筆頭に、スペイン、フランスとカトリック系が多いとは言われている。プロテスタントは実務的で勤労を美徳としており、カソリックはより宗教的で信仰と人類愛、家族愛これらが生活の基盤となっている印象である。
食べ物はカトリック系の国が圧倒的においしいと言われる。スペイン、イタリア、フランスのような国の食文化と比べた時に、ドイツの食文化のなんと貧弱な事か。どちらかというと労働者が栄養源としてのみを考えて、食事を摂取するという感じだ。カナダに行っても、モントリオールがあるケベック州は食文化がある。それはフランス文化圏だからであり、他の地域とは一線を画している。一国の中で文化圏が違う例であり、これは非常に分かりやすい対比となっている。
しかしながら経済界で現時点で成功していると言えるのは、ドイツ、英国、また英国の起源を有する米国であると言えるだろう。ここに宗教改革の本質が表れているともいえる。怠惰で宗教に傾倒し過ぎたカトリックに対するアンチテーゼだったわけだから、勤勉で現実主義なプロテスタント系が資本主義というからくりに会っているというのは勿論当然の事だろう。2008年以降の欧州債務危機でも主役はスペイン、ポルトガル、ギリシャ、イタリアだった。南ヨーロッパの国々である。
そのように考えると、現代社会において経済発展を則す一つの原理は脱宗教と言う事になるのかもしれない。国として宗教色が強いところは、中東やインド、インドネシア、エジプトなんかも言えるし、先ほどの南ヨーロッパ、についても言える事であるが、残念ながら国民の関心が宗教的な事に向かってしまい、経済振興に振りきれないのかもしれない。
20世紀は米国、日本、ドイツというそういう意味では宗教感の弱い国々が対立する世紀だったが、21世紀はどうなるのだろうか。中国の台頭は21世紀に入ってからであり、同じく宗教色は弱い国とは言えるだろう。米国の現状はどうだろうか。分断が鮮明となり、保守とリベラルの溝は深まっている。そんな中経済を引っ張っているのは明らかに西海岸にいるリベラルな思想を持った人たちである。
一方、ラストベルトとか伝統的な白人中間層は以前よりも、恐らく70年代、80年代は必死に働き、経済的な恩恵を享受していたが、一生懸命働く事で稼げる仕組みが無くなってきている今、結果として宗教的な活動へ傾倒している人間が増えているように感じる。これはメキシコからの移民が増えていた事にも影響されるのかもしれないがカトリック的な保守的な宗教観が強まっているのではないだろうか。
稼げなくなってくるから宗教的な色合いを強めるのか、宗教的な色合いが強まるから稼げなくなるのか、因果が逆になっている話を書いているようになるので、どちらが原因で結果なのか、両方ともいえる気もするが、今後米国はますます分断を深めていくだろう。貧困で宗教にすがる勢力、一方無宗教的で金を稼ぐ勢力、これらの分断は深刻になるだろう。今後恐らく、社会保障コストは増えていくと思われ、そういった中でリベラル、無宗教、富裕層、のアメリカ人はどうふるまっていくのだろうか。同じアメリカ人だけど、宗教観が違い、勤勉ではない人たちの救済に回るのだろうか。それよりもリベラルな人だと、もっとグローバルな貧困の救済に走ろう、となるのだろうか。そうなると米国内での分断、貧富の差はますます広がり、米国を一つにしていたアイデンティティの崩壊さえ招きかねない。今回の米国大統領選挙では分断というキーワードが盛んに言われていたが、本当に終わりの始まりになりかねない。戦争でも無いと挙国一致で融和を行おうとならないだろう。それくらい思想的には真逆な人間が明確に分かれてきている状況であり、もともと移民の国であるので、歴史的アイデンティティが弱く、もしかすると砂上の楼閣なのかもしれない。