米国大統領選挙の本当の声

2020年8月21日の日記より(トランプ元大統領は敗戦しましたね)

米国大統領選挙の本当の声

米国大統領選挙については、筆者はトランプ大統領の再選とみる。理由は色々あるが、一つ言える事はマスコミによる論調と、世論調査にはそれほど意味が無いと言う事で、これは2016年にはっきりした。筆者は米国に住んでいたが、投票直前まで世の中はヒラリークリントン大統領が誕生すると思っており、老人で、強欲に映るトランプ大統領が誕生するとは、一般的には思われていなかったと思う。ただ、もちろん筆者が付き合いのある産業の経営に従事している層の人間はトランプ支持だったし、実際に投票した。そういった層の人間の声は、有力マスコミでは報道されない。これは日本もそうだが、マスコミとくにテレビ関係というのは基本的にはリベラルだからだ。世界は平等で、戦争が無く、格差がない社会であるべきだ、そういった思想が根底にはあり、下手するとそれを先導しているのが自分たちマスコミなのだ、それくらいのリベラルなのだと思う。

ファンタジーランド 【合本版】―狂気と幻想のアメリカ500年史

だからこそ、先ほど述べた実際の産業の経営を行っている層の人間はマスコミとは一定の距離を置いており、世界は現実的なところであり、企業の経営というのは「やるかやられるか」の厳しい世界であり、自分の会社が生き抜くためには、中国の脅威を叩いてくれて、保護主義を守り、伝統的な工業製品の生産を米国内にとどめようとして、なおかつ法人税を下げてくれるトランプ大統領を支持するのである。こういったマスコミとは距離がある(大手マスコミは大都市にあるが、工業地帯は地理的にも実際距離がある)人々の投票行動は選挙前にはあまり見えないものである。日本人の感覚だと、例えば東京と長野県、であれば車でも往来できる距離であるが、例えばアメリカのミシガン州とNYのマンハッタン、というのは本当に距離があり、価値観も大きく違う。アメリカはUnited Statesというだけあって、州毎の独自色が、日本で言う県の独自色よりも強く、州を跨ぐと税制も、法律も違う。そういった中で、我々日本人が思っている以上に、アメリカ人という人物像を均一化してみる事は出来ないのである。

話を少し戻すと、実際の産業の経営者層は今回の大統領選挙でも多くはトランプ大統領に投票するだろう。この層は、温暖化は気にしないし、中国との摩擦も、現状維持で良いと思っているからである。バイデン氏の政策は徐々に見えてきているが、トランプ大統領との数少ない違いは、対中政策と環境政策、と言う事になるだろう。恐らくメディケアの拡充などというのは財源不足で上手くいかない。対中政策を融和方向にもっていきたいのがバイデン氏の政策になるだろうが、この点が今後の火種となる。以前にも書いたが、アメリカ人の共産主義に対するアレルギーは相当なものであり、これはロシアよりも中国において強く出ると思われる。ロシアは形上はソ連を解体して民主国家になった。もちろん野党指導者を毒殺したりとか本質的に民主的な国家と呼ぶには足らないが、共産主義アレルギーの人々においては、中国よりはましな状況である。マスコミの論調では、この点がまだクローズアップされていないが、今後FOXがけしかけるだろう。その時にラストベルトの人々、産業に関わる人がどういう選択をするかだが、恐らくトランプ支持に戻ると思う。

もう一つの重要な層である、若者、非白人、貧困を抱える層であるが、ここに訴求するポイントは、バーニーサンダース方式であり、どちらかというと共産主義的な左寄りの政策になってくる。若者がこちらに寄り易いのは万国共通だと思う。この層に訴求するための政策は、富裕層への増税、医療保険等のセーフティーネット、と言う事になるのだろうが、富裕層への増税については、この時期にバイデン氏がコミットできるかというと、そこにはバーニーサンダース氏ほどの強さは無い。バイデン氏自身が富裕層でもある。医療保険改革については、これは増税の議論とも重なってくるし、バイデン氏は$2兆ものインフラ投資をすると言っているが、こんな事は可能なのだろうか。増税が無いと実現できない政策が多いという、野党にありがちな選挙戦になってはいないだろうか。

勿論未曽有の危機と呼ばれるときには、実現不可能とみられる政策をあげる野党が与党を負かしてしまうと言う事はあり得る。今回の大統領選挙がそういう事になる可能性もある。しかしながら、筆者の見方としては、バイデン氏の上げる政策の実現可能性への疑問符、中国との近しい関係、民主党の中ではあまりに中道派過ぎて貧困層の掘り起こしに苦戦する、と言う事で、トランプ大統領を打ち負かすほどの票を集められないのではないか、というのが予測である。 個人的には副大統領候補にカマラハリス氏を指名して、黒人の父親を持つ多様性の高い女性を持ってきたことは評価しているが、アメリカの貧困層としての黒人に彼女の存在がどこまで響くのか、カマラハリス氏はもの凄いエリート路線で生きてきた女性である。この女性に対して、空港の掃除係をしている黒人男性は投票をするのだろうか。トラックドライバーは投票するのだろうか。この辺りが民主党中道派の限界であり、結局は共和党候補者たちと同じで、金銭的には大きく余裕があり、エリート街道を歩んできた候補者に落ち着いてしまう。色々なストーリーをちりばめていくのだろうが、ヒラリークリントンが躓いたのも、結局はこの部分なのだと思う。First ladyだった過去、弁護士だった過去、これらがある事で投票を避ける層が、少なくなく、しかもその層が民主党にとっての勝利へのキーになる層であるからこそ、大きな問題では無いかと思う次第である。