緊急事態宣言の効果

2021年2月3日の日記より

緊急事態宣言が延長されたわけであるが、緊急事態宣言の効果について、分析している例があまり報道されないのでよくわからない。Go toキャンペーンにより感染が拡大した可能性があるという例の京大の西浦教授の解析結果が瞬間的に報道されたが、あれも教授自身は色々な可能性を伝えたかったのに、一部マスコミが捻じ曲げてGo toキャンペーンを悪者にして、政府批判に繋げたかった意思が先に立ってしまって報道がねじ曲がり、恐らく京大の方からストップがかかったのではないだろうか。

感染症の日本史 (文春新書)

マスコミは自分の論調に都合がよくなければ報道しない。事実に基づいているかどうかは関係なく、視聴率が取れるかどうか、革新系のメディアは政権批判につながるかどうか、これが優先順位が高い。視聴率が取れるかどうかという点は営利企業であるから当然であり、普通の感覚で言うとやむを得ないだろうなと思うのだが、ここにも世代の断絶があり、主に50代以上の人々にとっては、「テレビが言ってるんだから」とテレビは正しい事を報道するものという先入観が強い。

これは情報ソースがテレビしかない時代を過ごしたから検証の使用が無かったからそうなってしまったのかと思う。戦時中の新聞報道がそうであったように、当時の国民は新聞報道が得られる情報の全てであり、新聞が報道しない事は起こっていないという錯覚になってしまった。そういった限られた情報で作られた世論に乗って、というか世論に酔って、軍部が強気強気の政策を進める事になるのである。

その子供世代である現在の50代以上のテレビ世代には、戦時中の新聞報道に熱狂する国民の感覚がいまいち理解できなかったのではないかと思うが、今日起きている事はまさにそういう状況で、テレビ世代がテレビを妄信するのをネット世代は理解が出来ない。テレビは情報発信の一方法でしかなく、他にも情報はいくつも得られるし、日本のテレビだけではなく、世界にもテレビがあると言う事に、ネット世代は気づいているから、日本のテレビが言っている事に拒否感があり、信用していないところがある。一方でテレビ世代はいまだに、テレビが言ってるから正しいだろうという感覚であり、これはまさに戦時中の翼賛会的で、連戦連勝報道に酔っていた国民の陶酔と同じである。

こういった事が現代のテレビとそれを取り巻く世論で起きている。65歳以上が国民の三割で、50代以上というくくりにすれば恐らく半数近く、実際に投票行動を起こす人の割合で言ったら若者は投票率が低いので軽く半数を超える世代が、いまだにテレビ世代なのである。

テレビなんか見ないという若者が多くなっているが、世論はテレビ世代が形成する。その世代をコントロールしているのがテレビというマスメディアであり、とにかくコロナウイルスについても煽り立てる。政府はその煽られた人々の意見に追随していないと次の選挙で勝てないので、マスコミの煽りに乗ってしまう。そうやって緊急事態宣言の効果についての化学的な検証は碌に公表されず、空気感だけで延長が決まってしまう。緊急事態宣言の効果は勿論あったと思うが、どの程度あるのか、これを検証しないといけない。こういった科学的な、統計学的な議論がなされるべきであり、また、ゼロかイチかという議論に矮小化する向きもあるが、本来、感染者の増減は、人の往来、気候、感染防止策、の複合要因であり、どれかが効果があり、どれかが効果が無いとかそんな単純な議論ではない。そういった議論に恐らくマスコミが付いていけないのだろう。マスコミはそんな議論をくどくど説明しても、国民は理解できないし、視聴率が取れないというかもしれないが、国民をバカにしてはいけないと思う。それは言い訳であり、恐らくマスコミに科学的なリテラシーがある人が少ないのだろう。テレビのコメンテーターは歯切れの良さだけを気にして、「要は」とか「つまり」とか分かったようにまとめたがる。

専門家の方に向けて「要はGo toキャンペーンは愚策だったという事ですよね?」とか聞く。専門家は「色々評価はあると思うが」とか「結果として拡大している事実を見ると」とか前置きや仮定を並べて言おうとするのだけど、言った後に“歯切れのいいコメンテーター”が「結果としては感染拡大を招いたわけで、愚策だったと思います」的な薄っぺらい議論にまとめてしまう。テレビというメディアと、それを信仰するテレビ世代の関係性には、戦時中の新聞報道とそれに酔って戦争を推進する世論に染まっていた国民の図式と変わっていない現実を突き付けてくる。