2021年2月10日の日記より
世の中そろいもそろって金融緩和を行い、市中にはお金がじゃぶじゃぶ溢れている。バブルを唱える声もあるが、日本に関しては大きな意味での金融緩和は今に始まったわけではないし、今後も出口は見えていない。物価上昇率が2%になるまで金融緩和を止めないと言う事は、物価上昇率が2%になるまで不動産価格は上昇するし、2%を超えたら金融緩和をしなくても価格は上昇するという事なので、いづれにせよ上がる。そういう観点ではバブルかもしれないが崩壊する事は無いという現象が起こっている事になる。
本来需要と供給で決まる価格が何故そういう動きをするかという点を考えると、まず一つには金融緩和による効果云々という説明はそれほど実は説得力がないという事だろう。株と違い不動産に占める実需の比率は高い。ここでいう実需というのは実際に人が住むという事であり、そこには払える額と払えない額という明確な基準があるわけで、不動産価格が金融緩和の影響だけで上がり続けるというのは株と違って、理屈が弱い。もちろん富裕層による投機的な動きというのもあるが、それはあるにはあるが、限られた範囲であり、実態として購入して住むなり、賃貸に出して借り入れる人がいるという事実があるからこそ不動産価格は上がっているとみる。
不動産を含む資産価格の上昇による恩恵を受けた層がいて、その層が高値の資産を購入している、これは一定程度の影響があるだろう。ただ、それにしてもここまでのムーブメントになるかというと疑問が残る。何故かというとそれ以上に重大な社会の変革がここ10年で起きているという点が見逃されがちだからだ。 それは何かというと圧倒的な共働き世代の増加である。ここ10年間で厚生労働省の発表によると1000万世帯が1400万世帯ほどに増加しているのである。今となってはむしろ常識とはかけ離れている感じで、性差別とも捉えかねないが、10年ほど前は女性は結婚すると会社を辞めるというのはまだ常識であった。常識は言い過ぎかもしれないが、実感としてかなりの比率でそうだった。会社の上司は寿退社を心配して、女性事務職のバックアップを多めに取ろうとか、人員補充を行うとか、そういった事は10年ほど前までは真剣に語られていたのである。
しかしながら、今の30代女性、もっと言えば20代女性は結婚をしても仕事を辞めないだろう。妊娠をすると育休を取得するだろうが、それでも辞めない比率が圧倒的に増えている。これはこういう事を発信すべき年齢層が性差別やセクハラを懸念してるからなのか、十分に発信しない事実であるが、驚くべき変化である。筆者の周りの知り合いとかを見ていても、今の30代前半の世代はもう結婚をして仕事を辞めるという感覚はほぼ無いように感じる。まさにこれくらいの世代が住宅購入を検討するのである。日本人の給料が上がらない、なのに不動産価格が上がるのは何故なのか。こういう疑問があるが、世帯年収は確実に上がっている。これは10年前と比べても5-10%は少なくとも平均で上がっているとみる。これが特に都会の中流層では起きており、中価格帯の住宅価格も上昇を続けているのである。この傾向はもう数年は続くかもしれない。もちろん小幅な上下動はあるだろうが、全体的なトレンドがここ10年で劇的に変化しており、戻る事は無いだろう。専業主婦世帯が今後増える事はあり得ない。これは女性の社会進出、働き方改革にもつながる話であり、逆戻りは無い。
そういう意味では、不動産価格はもう数年の上昇の後、ニューノーマルの価格帯で高止まりするだろう。例えば15年前の水準では異常に高いと思われるような価格が、今後の「通常価格」と言う事になる。「こんなことは起きえないし、過去の経験で言えばバブルだ」という人がいるが、これはこの10年の社会の大きな変化に気づけていない人であり、過去の水準が未来にわたって続くと思い込んでしまった日本人の盲点なのかもしれない。